黒島 椿のアンニュイな日記

よく空気嫁といわれます。が、そんな特殊能力は無いです

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私の とんでも本

2011/08/16(火) 23:01:52 趣味 THEME:推理小説・ミステリー (ジャンル : 本・雑誌 EDIT
『日本と学会』という組織があります。
世の”とんでも本、出版”を研究している組織で
何冊か『と学会年鑑』という本もだしています。
私の蔵書のひとつです。

と学会年鑑 KIMIDORI では
と学会会員の岡田斗司夫氏の
『いつまでもデブと思うなよ』が取り上げられていて
愉快な内容に仕上がっています。

私も一冊、いわゆる
”とんでも本”を持っているのですが
なかなか紹介する機会がありませんでした。

あれから10年経ちましたし
そろそろ時効と判断します。
今回は私の所有する”とんでも本”を紹介します。

その名も
「悪魔の召使 レビヤタン」
超マイナーな作品です。

おそらく世界で50人も知らない本です。
そして世界に30冊しか存在しない幻の本です。
禁書に相応しいオーラを感じます。
google検索ヒット数”9件”!
いやヒットしたことに驚きますがね・・・。

話は11年前に遡ります。
当時某県立高校の軍隊みたいな寮に
(私はそこの寮生でした)
SKという寮監がいました。

年代モノのワインレッドのトヨタで
エンジンを「ボボボっボキュ!」と唸らせながら
トロトロ出勤してくる姿が印象的な方でした。

齢は当時で65を過ぎていたと思います。
現実味のない噂の耐えない方で
奇行が目立つ方でした。

一番の奇行は、寮に猟銃(ショットガン)を持ち込み
夜寝ない寮生を見張っていたことです。
寝ない寮生は永眠させるといった
かなり強引な方策であったのは間違いありません。
幸い死者はでませんでしたが・・。
私も平和な日本で銃を向けられるとは思っていませんでした。

誰もが彼のことをキ○ガイと思っていました。

この話はフィクションかもしれません。
と言っておきます
話半分に聞き流してください。

2000年のある日 彼が突然
「春休み中に出版記念パーティーをする!」
と言い出しました。
またいつものアレな行動か!?
と思ったのもつかの間、
何人かの寮生は出版記念会場の準備
そして本そのものの製本に
駆り出されることが決定しました。

私は運良くその役務を逃れたのですが
出版記念パーティーは
ある意味貴重な体験ではないか!?
と思ったので参加することにしました。

20世紀最後の3月末日、鹿児島の某会館に言ってみると
空き室にたくさんの人がいました。
しかしほぼ全ての人々がキョロキョロしていました。
雰囲気がおかしい
いろいろ話を聞くと皆大体、
「なぜ、何をするために呼ばれたのか解らない」
とのこと。
会場は何もなく、ただ人が集まっているだけ。
そりゃ訳もわからんわな。。。

開演時間になってSK氏登場
そこでいきなり会場セッティングを支持される。

なんというサプライズ!
当時の若い私は大いに胸が高鳴りました。

誰もが、何も知らない!そしていきなり!
こんな斬新な記念会があるのか!すばらしい!

予定より遅れて記念会が始まりました。
司会はなんと鹿児島県人には有名な
猪俣睦彦 氏こと
むっちゃん!
それではどうぞーーって感じで むっちゃん登場
inomatamutuhiko.jpg
「えー、今回呼ばれた
  いのまたむつひこと申します。
司会進行やるんですか?何も聞いてないんですけど?
昨日いきなり電話で呼ばれて・・
そもそもこれって何の式典なんですか?」

MBC南日本放送の看板アナウンサーをして
この狼狽ぶり!
さすがSK氏!
しょっぱなから会の進行を盛り上げてくれます。

つづく偉い人々の挨拶もほとんどが
「私は彼を知らない。私は何を話せば良い?」
といった内容で
当時モンティーパイソンなどの
シュールギャグにハマッていた私には
最高に満足な展開でした。

さらにSK氏の友人の挨拶では
「彼との最初の出会いは終戦間際に
種子島の海岸に流れ着いていた彼に・・・」
といった尋常ならざる話で
「こりゃあ数々の現実味の無い噂も
 あながち嘘ではないかもな!
 このじぃさんが空気を読んでいる可能性もあるが!」
と当時の私を納得させたものです。

記念会は淡々と進み(皆スピーチが短い)
SK氏の挨拶
「私は本を出版したかった。
 しかし どこの出版社も取り合ってくれない。
 だが私は閃いた。
 出版社が拒否するなら
 自分で出版社を作ればいいじゃないか!
 そして研玉社という出版社を作って
 今回 めでたく出版と相成ったのです!
 その名も『悪魔の召使い レビヤタン』!」

当時17歳の私は雷に打たれたような衝撃を受けました
『無ければ作ればよい!』
涼宮ハルヒばりの思考回路!(部活がなければ作ればよい)
しかしこれは現実の老人の行動なのです!
しかもハルヒが出版される前の出来事なのです!
元気があればなんだってできるような気がしました。

記念会はSK氏が
詩吟や舞を披露して解散となりました。
即売会もやるというので
私は迷わず買う事にしました。

会場をでる人々が ことごとくスルーする中
私は本を手に取りました。
「なんか表紙がボロい・・・」
と思ったのを見て取ってかSK氏が
「その表紙は元の表紙ではない!
 サントリーの苦情を受けて急遽取り替えたものだ
 だから作り直した表紙を昨日急いで寮生に
 コンビニでコピーさせたのだよ」

(あぁ。。。片道2kmのコンビにまでいって
 カオスな表紙をコピーしたであろう同胞の苦行
  を思うと胸が苦しくなる・・・というか
   サントリーからの苦情ってなんだ?)
と思いながら購入。

価格1500円。
正直ドブに捨てるような気持ちでした。

そして内容のカオスぶりに
私は大興奮しました。
シベリア超特急なんて目じゃない
大どんでん返し!
ぶっちゃけていうと
最終的に主人公が殺人犯の野望を食い止めるために
主人公が先に殺人を行い野望を阻止する(死人は殺せない)
といった展開に驚きました。カオス。

それまでの展開も先が読めないスリリングな話で
戦前のマニアックなB級事件や
大蔵省の陰謀、ショットガンの解説、猟の仕方、
コンピュータプログラム、統計学、暗号解読、聖書
といった多岐にわたり
話の展開そのものがミステリーという
斬新な内容でした。
正直340ページ読むのに1ヶ月かかりました。
最後の大どんでん返しを読んだあとの
虚脱感はなかなかのものでした。

以下にレビューを付けておきます。
ネタバレ上等です。
世界に30冊しかないんですから
どうせ手に入らないですしね。
rebiyatann2.jpg
↑表紙。コンビニコピー用紙で11年経っているためボロボロです。
ちなみに左側が表。
サブタイトルが多くて解りづらいですが
表題は『悪魔の召使 Leviathan』
古いパソコンのワープロ罫線で描かれた狼のイラスト。
その下には
『Calamvs Gladio Fortior』
ペンは剣よりも強し
の文字。ビビットな配色センスが光ります。
rebiyatann1.jpg
右側にある作者略歴。
・1931年生まれ。
・慶応義塾大学文学部甲類修了
・中央文学にムーラン・ルージュ発表
・県庁在職時、『コガネムシの研究』で林野庁長官賞受賞
・サントリー・ミステリー大賞に『図説・殺しのデザイン』を応募

『コガネムシの研究』から『図説・殺しのデザイン』
にいたる心境の変化が気になりますが、
”応募”を略歴に乗せるのは斬新。
rebiyatann6.jpg
・はじめに
サントリーミステリー大賞に応募し、二度も選外佳作になるに及んで、もはや私の作品が世に出ることはあるまいと絶望しかけていた。
そんなある日、書店で一冊の本が私の目を射た。即座に購入した。
それは布施英利氏の「インターネットで作家になる方法」だった・・・・・(以下略)・・・・・・大変お世話になった。おかげで本づくりの楽しさを味わえたことは、幸運というほかない。2000年3月3日。

絶望するところを絶望せず、また
インターネットで作家で作家になるには;・・
という本に刺激を受けて実際に出版社をつくってしまった
(インターネット関係無ぇ・・・・)
超展開にSK氏の熱意を感じます。
幸運ではなく、熱意で実現した本づくり・・。
まぁ本人が楽しければ良いんじゃないでしょうか・。
rebiyatann3.jpg
しかし次のページにはこんな付箋が・・・

・おことわり
序文にある、サントリーミステリー大賞の選外佳作の文言についてコメントいたします。
選外佳作は誤りであり、サントリーミステリー大賞運営委員会は、佳作発表はしておりません。
この点深くお詫びいたします。
ただし「図説・殺しのデザイン」(およそ500枚)委員会に応募したところ、捲土従来(再挑戦と理解・通知文を保存)を二度、呼びかけられたものであります。


なんと!選外佳作でさえなかった!。
しょっぱなから突っ込みが入るすばらしい構成!
そもそも存在しない賞を受けて絶望しかけるという
まさに作者自身が超展開なのであます。
「また送ってください」というのは
どこの作品賞にだしても返ってくる礼文だと思うのですが・・

というかサントリーの苦情ってこれか!
おそらく初期の表紙には
「サントリーミステリー大賞 選外佳作」
と書かれていたのでしょう。
サントリーミステリー大賞運営委員の
驚いた顔が浮かびます。
微笑ましいエピソードですね・・・。
rebiyatann5.jpg
↑目次であります。
題目を見ただけでこの作品の超展開ぶりを
感じ取ってもらえると思います。
rebiyatann7.jpg
あとは挿絵をいろいろ紹介します。
ワープロソフトの罫線だけで描かれたイラストですが
何気に躍動的なデザインであります。
個人的には上手いと思うのですが
何分、単語が抽象的または極端に具象すぎて
絵がついていけていません。
rebiyatann8.jpg
まるで宇宙人の描いた地上絵のようです。職員配置図も斬新。
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リアルにショットガン所有者だけに細かい解説。
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スラッグ弾のリアルな弾道に注目
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ババーーン!もはや何がでてきてもおかしくない!!楽しそうだ・・・
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rebiyatann13.jpg
rebiyatann14.jpg
専門家の解説が欲しい。凡人の私にはSK氏のような天才の解説では解らない・・。
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上記図説は究極のシュール展開だと思う。
「やめなさい!機械が壊れる!」
   ↓
「なぜですか?」
   ↓
「自分で考えなさい」
rebiyatann17.jpg
↑上の図は11年前、深夜寮生を呼び起こし、
食堂に集めて”盗難事件の真相”の解説図としても使用されました。
普通なら寮生が盗んだ。と考えるところを
酸素ボンベに潜水服という本格的工作員と
規定したところにSK氏の隻眼を感じます。
ちなみに寮は山の中にありました。
rebiyatann18.jpg
主人公曰く、
「あっ母が殺された!
帰らなければ姉も危ない!」
主人公の冷静さ、切り替えの早さに脱帽。
やはり天才は違う。
ちなみに登場人物の多くが
寮の職員の名前であり、作者の怨恨を感じます。
rebiyatann19.jpg
時期出版予定のラインナップ!
タイトルだけでワクワクしちゃいます。
個人的には
「恐怖の般若面」が気になります。
しかしどれも出版していません。
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rebiyatann21.jpg
殺しのデザインのプロット。
この題材で500ページ描いたのですからすごいです。
フランス革命とロッテ戦法とベトナム戦法を
対比させるという斬新さ。
rebiyatann22.jpg
rebiyatann23.jpg
rebiyatann24.jpg
rebiyatann25.jpg

今では私の禁書コレクションの一つです。
SK氏、1931年生まれと書いてますから、
今年で80歳ですね,,,
元気にしてると良いのですが・・・・

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2015.05.14 17:56 # [EDIT]

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